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事前指示書と重要性

自分で意思を表示できる時に、人生の最終段階の医療とケアに
ついての意思を前もって表示しておくことが大切です

意思を表示できない人が心肺停止状態で救急搬送されてきた場合、その施設の医療チームは、一生懸命に救命治療を行います。気管に管を入れられて人工呼吸器を装着させられるだけではなく、中心静脈注射、胃チューブ、膀胱カテーテル、動脈ラインなどのたくさんの管につながれている状態になってしまい、回復する見込みのない場合では長期間この状態が続き、最期に死を迎えます。人生の最終段階に、いわゆるスパゲッティー症候群になっても救命に全力を尽くして欲しい意思があった場合は別ですが、このようにならずに人としての尊厳を尊重した医療とケアを行ってもらいたいと希望する場合には、前もって意思を表示しておくことが大切です。

意思を表示しておく方法には4つあります。一つ目は、家族等に口頭で自分の意思を伝えておくことです。意思表示ができなくなった時に、家族等が医療チームに意思を伝えてくれます。二つ目は、通院している施設の医療チームに口頭で自分の意思を伝え、診療録や看護記録にその内容を記載してもらうことです。三つ目は、自分の意思を文書にした事前指示書を家族等や医療チームに渡しておくことです。四つ目は、家族等と医療チームと将来の医療とケアについての自分の意思を前もって伝え、意思を尊重してもらうように話し合うことです(アドバンス・ケア・プランニング)。

米国では、人生の最終段階の患者さんの意思決定を尊重し、事前指示書による延命治療の見合わせが法律で規定され、患者さんの希望に沿った医療とケアが提供されています。なお、尊厳死とは、不治で末期の患者さんが、本人の意思に従い、生命維持装置による無意味な延命治療をせず、人間としての尊厳を保ちつつ、自然のうちに死をとげることを指し、無理な延命により、患者さんの尊厳が損なわれるのを避け、個人の生死観を尊重していますが、Death With Dignity Actが法制化された州では、わが国では認められていない自殺幇助の意味も含んでいます。

一方、日本では、延命治療の見合わせに関する法律で規定されていません。厚生労働省は、患者さんおよび医療従事者ともに広く理解が得られ医師の十分な説明を基盤として、医療従事者による適切な情報の提供と説明、医療従事者と患者さんとの話し合い、患者さん本人による決定、医療・ケアチームによる医療行為の開始・不開始・変更・中止の判断、医療・ケアチームによる緩和ケアを重要な原則として、2007年5月に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を作成しました。延命治療中止プロセスの指針である厚生労働省のガイドラインは、患者さん本人の意思を尊重し、関係者全員が合意する共同意思決定を基本としていますが、医師の刑事訴追免責基準は明記されていません。なお、2015年に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」に名称変更し、2018年にアドバンス・ケア・プランニングも重要視した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改訂しました。

意思決定権は、本国憲法第13条で保障され、エホバの証人輸血訴訟事件の最高裁判決によっても確立しているため、人生の最終段階の医療とケアに自分の希望をかなえるためには、意思を表示しておくことが最重要ですが、日本では家族等の同意も必要であり、家族等に意思を伝えておくことも重要です。皆さんには、じんぞう病治療研究会の尊厳生のための事前指示書等を作成する権利がありますし、作成しない権利もあります。人生の最終段階における延命治療(人工呼吸器装着、人工栄養、人工透析など)を受けるか受けないかについての権利を行使するかどうかについて、よくお考えください。なお、事前指示書を作成した場合には、考えが変わることがありますので毎年見直して更新するようにしてください。

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