慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は、早期から治療すればその進行は抑制できますが、いったん進行してしまうとどのような治療を行っても末期腎臓病に至り、最終的に腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)が必要になってしまいます。さらに、CKDから腎代替治療が必要になるよりも、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病(Cardiovascular Disease: CVD)を合併する患者さんのほうが多く、透析患者さんではCVDが死亡原因の第一位になっており、全身の様々な合併症も出現します。医療従事者は、 CKDを早期に発見し、早期に治療を行なうとともに、CVDなどの合併症に注意しなければなりません。
近年、高血圧や糖尿病からCKDを発症する患者さんが増加しています。CKDは、早期には自覚症状がないため、長期間放置されがちとなります。病状が進行してから発見されることが少なくはなく、かかりつけ医との協力関係を構築し、CKDおよびCVDの重症化を予防しなければなりません。メタボリック症候群、高血圧、糖尿病、腎性貧血、高脂血症、骨ミネラル代謝異常などがCKDとCVDを重症化させるため、これらの是正が重要です。不幸にして進行してから発見されたCKD患者さんに対し、医療従事者はQOLを維持・向上する治療を行い、患者さん自身が考える尊厳を維持し、患者さんが望み通りの生活を送れるように患者さんを援助しなければなりません。また、医療従事者は、CKD患者さんに十分な理解の下で治療を受けていただくことの重要性を認識し、患者さんに適切な自己管理・生活習慣の改善・運動療法・食事療法・薬物療法などを遵守してもらい、CKDの進行を遅らせることが重要です。また、患者さんが腎代替治療(血液透析、腹膜透析、腎移植)を正しく理解できる教育も行い、腎代替治療を適切に選択し、円滑に導入ができ、より安全で快適でQOLが向上できるようにしなければなりません。
じんぞう病治療研究会 代表世話人 岡田 一義